- 北山:間もなく創業一周年を迎えられますね。まずは、おめでとうございます。
- 水野氏:ありがとうございます。2008年8月末に長年勤めた丸紅出資のM&Cという会社を退職し、同年9月1日にMizuno Consultancy Holdings Limitedを立ち上げました。早くも一年経とうとしています。早いものですね。
- 北山:創業当初は何かと大変だったのではないでしょうか。私は起業一年目で血尿が出たり10キロやせたりしました。今、一年を振り返っていかがですか?
- 水野氏:とにかく無我夢中に全力疾走した一年でした。当然ですが、会社を辞めると翌月から給料日に給与が口座に振り込まれなくなります。起業した9月は殆ど無収入でした。不安や希望が激しく交差する時期が続きました。交通費を少しでも安くしようとしたり、好きなスターバックスのコーヒーも飲めないくらい切り詰めていました。
ただ、現在は御陰さまで約160社の顧客がいます。スポット契約の顧客も含めると250社になります。計算すると一営業日に約一社の顧客を開拓できた事に成ります。なんとか初年度から黒字を達成できそうだとわかると、ようやく顔に少し余裕が出てきました。最近は社員に休んでくれと言われています。
この一年間は本当に皆さんに支えられてここまでやって来れたという事を実感しています。フジサンケイ新聞、政府機関、お客さん、部下など、多くの方にささえご支援頂きました。「水野でなければ」と言って頂いた時は、非常に有り難かったです。 - 北山:水野様の講演会には大勢の方が集まっていますね。講演会でお話させた数も相当多いのではないでしょうか?
- 水野氏:講演会は参加者の表情が見られるのが楽しいです。またこの一年は会社の認知度を上げるため、一度も断りませんでした。一番多いときは月に6回もやりました。この一年で50回ぐらいやっているのではないでしょうか。参加人数も一番多い時で800人。平均的には200人の講演会が一番多かったです。ただ大勢になるとどうしてもメッセージが一方通行になるので、できれば参加者全員に話しかけられる20人ぐらいの少人数の講演会が一番好きです。
また、一番商売に結びつくのも20人ぐらいですね。今後講演会は月に一回ぐらいにしたいと思っています。 - 北山:NNA(http://news.nna.jp)での連載も300回を超えたとお聞きしました。
- 水野氏:一番多いときは、7つ連載を持っていました。現在は3つに絞っています。週刊の連載を2つ持っていた時は原稿を書くのが大変でしたが締切を過ぎたのは一回しかありません。(笑)ブログの更新も大変で、ネタに困った時は食べ物の写真を掲載する事もあります。ただ、食事を食べ終わってから写真を撮り忘れた事に気がつく事もしばしばあります。
- 北山:創業当初、多くの著書を出していた事で知名度が高かったのも順調な滑り出しの一因ではないでしょうか。水野様は著書を沢山書かれていますが、なぜ沢山本を書かれているのですか?
- 水野氏:一番最初の著書を出したのは丸紅時代です。丸紅でコンサルをやろうとした時、丸紅は商社としては知名度が高いですが、コンサルティングという事では無名なので、なかなか仕事がとれませんでした。そこで水野という私の名前に対する知名度を高めようと考え本を出したのです。
名前が知れ渡るまでは虚勢を張っていました。誰でも虚勢を張っている時は、肩に力を入れて本来の自分と違う自分を演じていたり、嫌な奴だなと感じたりしますので、それがストレスになっていました。中国にいる日本人に私の名前が知れ渡るようになって肩の力が抜けました。 - 北山:大手企業にいた時と起業した今とではコンサルティングに対する姿勢も異なるのでしょうか?
- 水野氏:自分では同じつもりですが、やはり違います。コンサルタントが身を置いている環境がコンサルティング内容に大きく影響するからです。
大企業は第一に利益重視です。短期的な利益確保を求められます。大手企業の中には利益さえ出ればコンサルティングの中身はどうでも良いと思っている企業もあります。
また大手企業から出資を受けている会社であれば出資元の思惑に大きな影響を受ける事もあります。例えば出資元の会社がファンドを運用していれば、そのファンドを売るように求められます。しかしコンサルティングを受けている顧客にとってはファンドが買いたくてコンサルティングにフィーを払っている訳ではありませんよね。(笑) - 北山:以前、いろんな総合商社がコンサルティングを行なうという報道がありましたが、最終的に御社のみが実現されていますよね?
- 水野氏:私だけが実現出来た理由を一言で言うと、私が“わがままだった”からです。商社がコンサルティングをやる目的と顧客がコンサルティングに求める事が食い違っています。商社は子会社を作って行なうコンサルティングを自社の販路拡大につなげる情報入手の手段と考えています。その為、商社としてはコンサルティングを受けている会社の顧客の情報や相談内容を知りたいのです。しかし、お客さんは商社には知られたくない。これを開示するとコンサルトして信頼を失うので、私は頑に出資元の商社に開示しませんでした。これが弊社だけが商社としてコンサルティングを実現させた理由であり、同時に私が会社を辞める原因にもなりました。
顧客には「自分は中国に腰を据えてやっていくので信頼して下さい」と言っていたので、コンサルティングを辞めるのは、顧客の信頼を裏切る事に成ると思い、独立してコンサルティングを続ける路を選びました。 - 北山:コンサルティングに対して愛情をお持ちですね。水野様は元々経理のご出身ですが、なぜコンサルティングを行なおうと思ったのでしょうか?
- 水野氏:自分の知識や経験がお金を出してでも助けて欲しいと思うものであるかを確かめたいと思い、2001年にコンサルティングを始めました。当時、一経理マンでした。通常経理は食いぶちを誰かが稼いできてくれる事を前提とした部署なので、ビジネスに関しては消極的・保守的な方が多いのですが、私はかねてより経理部を独立採算制にすべきと提案する等、異論を唱えてきました。
- 北山:コンサルティングをする上で、どのようなこだわりがございますか?
- 水野氏:一般的にコンサルタントという言葉で想像されるイメージとは大分違うと思います。私は職人タイプなんです。私のこだわりは、机上の空論ではなく、“問題を解決する事”です。その為には積極的に現場にも行きます。
- 北山:コンサルタントの中には本来簡単な事を如何に難しくしたり、分厚い資料を作ったりする事が仕事だと思っている方がいますが、水野様の場合は、実務と理論をバランスよく行なわれていると思います。講演会前日に、撤退サポート時に数百人の従業員解雇現場に立ち会われたり、従業員に取り囲まれ工場に監禁された顧客を救助する徹夜で警察とやりとりされたりしていますよね。
- 水野氏:現場で顧客の問題を解決する事をポリシーとしていると、いろんな仕事が発生します。公安の出動要請をしたり、税関に止められたものをリリースしたり、外貨送金問題をクリアーしたり…通常大手ができない事を私ができるのはこれまでの経験の蓄積によるところが大きいです。どういう頼み方をしたら許可がとれるのか、それは実際に現場に行って確認しないと分かりません。
中国の法律や現場を知らないと、中国には法律が無いかのように思われている方も多いと思いますが、そうではありません。中国の法律はまだ荒く変化が激しい為、解釈の余地が非常に大きいです。法律を知識としてのみ理解するだけでなく、現場での実務と組み合わせて理解していないと対応できません。地域での違いやトレンドを抑える為に絶えず手を動かしておく事が大事です。
現場主義を貫く事で時には私もリスクに晒される事もありますが、現場での経験を積む事が自分の今後にもつながると思っています。私は起業してから色んな人に助けてもらった分、人を助けたいという気持ちが強くなりました。
僕を支援してくれている方や顧客には、コンサルタント不要論者が多いです。
現場叩き上げで全部自分自身で行なってきて、一般的なコンサルタントよりも中国でのビジネスについて経験も知識もある方々が自分の顧客になってくれています。 - 北山:御社HPには価格体系が明確に掲載してありますね。しかも3万円からと低価格ですね。
- 水野氏:短期的利益にこだわるのではなく長く続けられる関係を構築すべきだと思っています。
そのため、価格はぎりぎりまで安くしています。日々の質問に答えていると信頼関係がでてきて、そこから気持ちよく仕事を出せると思いますし、ネットワークは広ければ広い方が良いと思っています
例えば、適正価格が100万円のものを200万円取るなどして利益を確保していっても
信頼関係が築けず、結果、継続が難しく成る事も起こりえます。 - 北山:もともと中国に興味を持たれたのは、大学時代からですね?
- 水野氏:そうです。大学時代の講義で漢文に興味を持ち、第二外国語で中国語を勉強し始めました。そこで人間的にも非常に魅力的な先生に巡り会えました。その先生のゼミに入ったのですが、ゼミが終わるぐらいの時に先生が亡くなられてしまいました。自分は勉強熱心ではなかったので、先生は全く期待をしていなかったと思いますが、若かった私はこの先生の為にも中国を学ばなければと意気に感じて、勉強を頑張りました。1985年、大学3年時に中国に渡りました。その後、丸紅に入社して中国関連の仕事に就き、ここまできました。今では先生も喜んでくれていると思います。
- 北山:相談件数のペースとしてはどのくらいでしょうか?
- 水野氏:1日に10件ぐらいです。相談は土日も来ますので、年3000件ぐらいではないでしょうか。
- 北山:昨年、9月の起業早々の頃は、撤退、休眠、自宅待機、営業縮小等の相談が多かったと思いますが、最近では中国進出等前向きな話が増えてきていますか?
- 水野氏:08年度は撤退関連が8割程度でしたが、09年度は撤退関連の内容は約2割くらいに減りました。昨年は進出の話は少なかったですが、今年になり、特にここ2・3ヶ月は進出の相談が増えてきています。相談内容としては中国で本支店を展開したい、中国に再投資したいとか、中国から出資出来ないか、あとは現在行なっている取引のフォーメーションをもう少し合理的にできないかとかが多いです。
2001年は新設ラッシュで、とりあえずメディアも煽るし行ってみようかなという感じでした。しかし最近はある程度中国に対して経験や知識を持って挑む方が増えてきたと思います。 - 北山:御社は最初からホールディングカンパニーとして創業されましたが、なぜ最初からホールディングにされたのですか?
- 水野氏:一番の理由は人です。今6人部下がいて、7人目に成りますが、その人達がいないと仕事ができませんし、重要な人達です。彼らのモチベーションをどれだけ上げられるか、自分の会社だと思ってもらえるか。それには取締役、社長というキャリアステップを用意するのが一番良いと思いました。間もなく出す予定のボーナスをベースに出資させて、既存社員の中から社長を選出しようと思います。出資をしたり任せられたりするとモチベーションが高まります。
特に日本の大手企業は現地社員に権限を与えていなかったり責任者にしない傾向がありますよね。弊社は現金の取り扱いを含め全て現地社員に任せています。 - 北山:中国現地法人幹部には現地社員を起用しなかったり、日本では人事や経理をなぜか外国人に任せないという事があります。日本企業では頑張っても上に行けないと思われ、これでは優秀な人材が確保できませんよね。
- 水野氏:日本企業では外国人は出世できない上に、給料も低いですね。中国現地の日本企業はよく取締役等にできる優秀な人間がいないと悩んでいますが、現地の優秀な社員を登用しないのはナンセンスです。日本企業の駐在員の上司が現地社員でも良いと思います。
- 北山:御社では外部に対して言っている事を社内でも実践されているのですね。今後中国に進出する日本企業に対して一言アドバイスを頂きたいのですが。
- 水野氏:“人”と“自分の目”というメッセージを送りたいと思います。どこの国でもビジネスの要は結局“人”なんです。よく中国は“人”で、日本は“組織”で仕事をすると言われますが、企業だって担当者が変ればだめになり、人を見ている方が的確な時もあります。よく中国に行くと騙されると言う人がいますが、人を騙すのも人、人を守るのも人です。どこの国にも騙す人はいますし、中国で日本人が日本人を騙す事もあります。
ただ、日本人は知り合って間もない人でも全面的に信用してしまう傾向がありますので、信頼関係が構築できるまで時間を置くように注意した方が良いと思います。まずは小さな仕事を一緒に行なう事で人間性が見え、信頼できるかどうか判断ができると思います。
例えばまずは10日間ぐらいでも実際に中国に滞在してみて自分の感覚で中国のやり方を理解するのが大事です。中国を知らないが故に必要以上に不安を持っている人に対して更に不安を煽り自身のビジネスに繋げている人もいます。
中国を危ないと不安を煽る人が多いので、自分は普通だと言っておきます。また、“自分の目”を信じて頂きたいです。中国は非常に特殊な場所であると煽っている人がいますが、中国を必要以上に特殊な所だと思わない方が良いと思います。日本にもおかしな所は沢山ありますし、世界に特殊ではない国なんてありません。東京で仕事をしている日本人が九州に転勤になった時にどうするかを考えれば良いのです。
- 北山:なるほどですね。必要以上に構えない方が良いのですね。

- Mizuno Consultancy Holdings Limited
代表取締役社長 水野真澄氏 -
Suite 2408, Tower2, Lippo Centre, Tower2, 89 Queensway, Hong Kong
Tel 852-2522-0078
Fax 852-2522-1173URL:http://www.mizuno-ch.com/
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