- 北山:鈴木様は中国語を話せるとお聞きしましたが?
- 鈴木氏:はい。私の妻が中国人なのですが、妻の実家に行っても生き残れる程度の中国語は話せます。(笑)
- 北山:奥様は中国のどちらのご出身ですか?
- 鈴木氏:私の妻は四川省の出身です。四川と言えば辛い料理を想像する方が多いと思います。私が初めて妻の四川の実家に行った際、<中国流熱烈歓迎>で迎えられ料理をこれでもかと勧められました。(笑)辛い物は好きでしたので多少は大丈夫だと思っていましたが、さすがに本場はレベルが違います。出された料理は<赤色、緑色、黄色、黒色の油の色の料理に山椒らしきものや、唐辛子らしきものが隠れている>という初めて見る様なものでした。料理を出されても辛すぎてなかなか箸が進まず、上手に断れる程中国語も話せませんでしたので、涙をこらえながら食べました。
あと、中国人との結婚で特徴的なのは、写真館で新郎新婦が様々なドレスを着てポーズを取り超ラブラブな写真を沢山撮る事です。中国の一般家庭におじゃまするとこちらが赤面してしまう様な写真が家に飾ってあります。これは、新郎が通過しなければならない試練のようです(笑)。
女性が衣装選びに時間がかかるのは世界共通のようで、写真館の待合室は気長に衣装選びを待つ新郎で一杯です。その時、中国人の店員に話しかけられても中国語が十分に話せなかった為、「あの新郎は中国語がティンブドン(話せない)」と陰でコソコソ言われとても悔しい思いをしました。
この2つの出来事を経て、中国語を一生懸命勉強して話せるようになろう!と決心しました。今では御陰さまで大分レベルは上がったと思います。もっとも、10年近く一緒に暮らした今では四川料理の辛さがたまらなく好きになってしまい断る必要がなくなってしまったのですが(笑)。 - 北山:いつから知財に興味を持たれたのですか?
- 鈴木氏:私が知財に興味を持った最大のきっかけは<キヤノン特許部隊>という一冊の本を読んだことです。また、妻が東京大学の知財分野の著名な教授の元で研究生として知財に取り組んでいた事も私の人生観に大きな影響を与えました。
- 北山:その本のどのようなところに感銘を受けられたのですか?
- 鈴木氏:知財戦略が企業の命運を大きく左右するという点に感銘を受けました。この本ではキヤノン社の事業を強くするための特許戦略の姿が描かれていました。また、著者の先生にお会いする機会もあり、色々と経験談をお聞きしました。例えば、キヤノン社はプリンターのトナーリサイクルビジネスを先読みして特許を取得していた為、後々他社がビジネス参入するのを防ぐ事が出来ました。しかし、特許を取得していなかった同業大手他社はこのビジネスに参入される事を止める事ができず、大きな損害を被りました。
知財とは<先読み>であり、<排他権>ですので企業のビジネスを守る事も他社のビジネスを止める事も可能です。企業経営では中小企業よりも資本力で勝る大手が有利な場合がありますが、知財では中小企業が大手企業の経営に対してより大きなインパクトを与える事も可能です。 - 北山:これからは国内のみではなく、海外展開においても知財戦略を考えておく事が必要でしょうか?
- 鈴木氏:必要だと思います。日本国内市場の縮小と新興国市場の拡大を背景に、知財分野でも海外戦略の重要性は急速に高まっています。私も以前より海外に強みをもった弁理士を目指してきました、現在では国内のみならず多くの国際知財戦略をサポートさせて頂いております。
- 北山:御社が特に強みとして持っている業務内容はどのようなところでしょうか?
- 鈴木氏:知財コンサルティングと実際の権利取得業務の二点です。特にアジア・中国に強いのが特徴です。例えば、知財分野において中国は一つだと思われがちですが、実は大陸・台湾・香港・マカオで全て制度が異なります。
- 北山:中国でも地域により制度が異なるのですね。中国に対する強みとは具体的にどのような事でしょうか?
- 鈴木氏:中国関係の制度を知っていることは当然ですが、中国の文化や中国人の考え方を理解しているという事が大きいと思います。これが理解出来ていないと適切なアドバイスや運用ができません。中国は日本と近く、顔も似ていて漢字も使うので、なんとなく価値観が似ているのではないかという先入観があります。しかし実際の価値観や考え方は大きく異なります。
そして、中国では信用できる人と付き合いが重要となります。中国現地に信頼のおけるネットワークがある事で現地での仕事がスムーズに進む事も多いですし、必要であれば私達の現地ネットワークをご紹介する事も可能です。また、中国の知財に関しては、発明協会の発行する雑誌(発明)に中国商標の実務の現状について書かせて頂いています。 - 北山:中国で知財というと<クレヨンしんちゃん事件>や<モーターショーでの明らかな他社デザインの模倣>を連想され、そもそも中国で知財は機能、存在しているのか?と思われている方も多いと思います。
- 鈴木氏:クレヨンしんちゃん事件は日本のアニメキャラが中国で商標権を取得されてしまった例ですね。日本でもメディアを通じてご存知の方が多いと思います。クレヨンしんちゃんの日本での権利を保有する日本企業は、香港に進出した際に、「中国は模倣文化なので特許等を取得しても無駄」と考えたようで、中国で商標権を取得しませんでした。その後放置しておいた所、中国企業が現地で商標権を申請し取得してしまいました。それでも異議を申し立てず長期間放置していた為、権利を取り返せなくなってしまいました。
逆に、無印良品は対応が的確でした。香港で「無印良品」の商標登録を取得して、同年、香港で合併会社の営業を開始したのですが、その後中国大陸で他社が「無印良品」を商標出願し、登録がされました。その後直ぐに本家「無印良品」が他社の登録取消を求めた為、他社による登録が取り消されました。 - 北山:中国での知的財産の法整備は進んできているようですね。
- 鈴木氏:進んできています。よく中国は知財保護の概念がなく、コピー文化なのでと諦めている企業が多いですが、実際には法律も改善が盛んで制度的にもかなり整ってきています。
例えば、ヤマハは中国での偽物商号の使用禁止を求め勝訴し、商標権侵害で約1億1200万円(830万元)の損害賠償を勝ち取りました。この金額は中国企業にとっては7億ぐらいに感じる日本企業以上にインパクトのある金額です。このように最近では中国でも日本企業が現地企業を商標権侵害で勝訴し、高額の賠償請求を求められるようになりました。
企業として中国市場を考えるのであれば、日本メディアが中国のコピー問題をこれみよがしに取り上げる事にのみ、とらわれていていてはいけません。企業としてしっかりと対策を打つべきです。
仮にアメリカの有名な企業が日本国内の製品に対して「その製品はアメリカで既にある商品のマネだ」と言われても、日本で誰もアメリカのその製品を知らず、日本でも権利を持っていなければ日本としてもその日本製品の販売権利を剥奪する事はできません。それと同じでいくら他国から見てマネだと言っても、その国において権利を持っていなければ、法整備が進んでいるかどうかに関わらず国が権利を守ってくれる事はないわけです。中国ではマネされるとわかっているのであれば、マネされたらどうするかと考えた方が建設的だと思います。
実は、かく言う日本も模倣大国です。某官庁の調べでは、日本企業の偽物による被害額は中国が第一位ですが、第二位は日本企業です。 - 北山:確かに日本でも「iPod」「ファブリーズ」「掃除機のサイクロン」等ヒット商品が出た後はすぐに似たような商品が沢山でますね。(笑)中国でマネされない為にはどうしたらよいのでしょうか?
- 鈴木氏:早めに対策をとることです。進出すると決めた時点、さらに言うと将来中国に進出する予定があればネット上に公開した時点で権利を取るのが最適です。中国は今や米国並みの訴訟国家となってきています。例えば、商標関係だけでも年間6万件の訴訟がある程、権利行使意識の高い国です。その国に対して知財武装なしで行くのは危険な事なのです。
企業のブランドを守るためには、法律的な権利も必要です。従業員などが頑張って作ったブランドでもレベルの低い会社にマネされてイメージが悪くなればブランド価値は下がってしまいます。
さらに、知財の世界は早い者勝ちです。例えば研究を事業の柱としている企業では、研究の結果、競合企業同士が同じ答えに辿り着く事も少なくありません。同日出願された事例もよくあります。知財は権利を得られるのは1番のみですので、2番以降は今までの研究等に注ぎ込んだ資金や時間が全て無駄になってしまいます。
中国での商標登録は現在膨大な申請数があるため、申請から取得まで約2年程度かかります。事業計画に合わせて早めの取得をお勧め致します。 - 北山:中国に関してはどのような問い合わせが多いですか?
- 鈴木氏:進出を考えている企業様から「中国に出ようと思うが、中国はマネが多い、知財分野はどうなのか?」というざっくりした問い合わせが多いですね。業種も小売り、サービス、メーカー等様々です。中国に対するイメージも古い方が多く、中国と言えば全ての方が人民服と自転車で毎朝太極拳というイメージをお持ちの方もいます。
- 北山:例えば、商標で、知財入門者は何から手をつけていったらいいのでしょうか?
- 鈴木氏:社名や商品名の場合、2つ確認すべきポイントがあります。一つはそのネーミングが現地の人達に受け入れられやすい名前なのかどうかという事です。もう一つはその名前が現地で取得出来るのかという事です。
中国人は英語文字が苦手で、漢字に置き換えて発音します。その漢字に良い意味があるか、音の流れが読みやすいかなどが重要です。例えば、キヤノンは中国語では<佳能>(読み:ジャーノン)です。音もキヤノンと似ていますが、“佳”という漢字には優れている、美しいという意味があり、“能”には能力という意味がありますので、漢字だけを見ても<性能の良い商品を作っている会社>という印象を与えられます。 - 北山:中国語には4声という4つの発生方法があり、組み合わせによっては発音しやすいものや発音しにくいものがありますね。
- 鈴木氏:中国では漢字の意味がとても重要視されます。企業名や商品名の漢字に好印象を持てるかどうかが企業の命運や商品の売れ行きに大きく影響します。日本の企業名や商品名をそのまま中国語にしただけでは、あまり良い印象が伝わらない場合もあります。この辺は中国現地の考え方に精通していないとわかりません。弊社では現地ネットワークを活用し、社名や商品名の中国語ネーミングを考える所から企業の知財戦略をサポートさせて頂いております。
- 北山:中国での現地ネットワークの活用をされているかと思いますが、日本では仕事/プライベート関わらずどのような所に行かれる事が多いですか?
- 鈴木氏:仕事以外では5歳と3歳の子供達との時間を大切にしています。子供は何故か首都高が大好きで、特に行き先よりもETC自体に憧れています。新幹線や電車も好きで一緒に見に行ったり、図書館の子供コーナーに出没したりしています。
- 北山:プライベートも充実されているようですね。ところで、おしゃれなネクタイをしていらっしゃいますね。どちらの物ですか?
- 鈴木氏:ありがとうございます。これは北京大学のネクタイです。中国側のパートナーが北京大出身ですし、他にも北京大に知人が多く、この間北京大を訪問した際にプレゼントされ、愛用をしています。
- 北山:普段から、中国の情報を取り入れる為には、業界に精通しているところへの訪問はかかせないですよね!

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プロシード国際特許商標事務所
■鈴木 康介氏
東京大学大学院医学系研究科国際保健学を修了した後、アクセンチュア株式会社にてSCMや人事系のコンサルティングに従事。大手国際特許事務所にて携帯電話、医療機器、薬関係の特許の仕事に携わる。その後、大手国際特許商標事務所にてソフトウェア、バイオから電力会社の特許の仕事や、ベンチャーの知財戦略や商標の仕事をする。2008年9月に独立し現職。
■取得資格
弁理士(特定侵害訴訟代理付記 弁護士と一緒に訴訟代理人ができる資格です。)
技術士補(生物工学)
初級システムアドミニストレータITMA(The Institute of Trade Mark Attoneys) 欧州商標制度 修了 2008年
日本弁理士協同組合 中国商標実務 修了 2008年
日本弁理士会知財ビジネスアカデミー 中国知的財産制度 修了 2008年日本弁理士会価値評価推進センター 副センター長
日本弁理士会関東支部幹事
URL:http://www.japanipsystem.com/







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