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セミナー


◆◆野村綜研(上海)咨詢有限公司(2/2)
   董事・総経理 皿田 尚氏
   『アジアNO1のコンサルティングファームへ』
   

〈前号のつづき〉

-入社5年目の“転機”
野村総研(NRI)に入社して5年、バブルが崩壊し、皿田氏の担当していた都市開発案件は徐々に減少していった。自分のやりたい仕事が減っていく中で、何か“物足りなさ”を感じていた。自分の中で、「当時の野村総研(NRI)でも着手したばかりであった民間の経営改革のコンサルティングをやってみたい」という思いが次第に強くなっていくのを感じたという。それまで携わることが多かった都市開発などの公的な開発プロジェクトとは異なり、民間企業への経営コンサルティングは、より短いスパンのプロジェクトが多く、自分の成果をより実感しやすい。「自分の性に合っている」そう感じた皿田氏は、自ら異動を決意。新たなステージで、サプライチェーンマネジメント(注2)の構築や破綻した企業の再生、企業グループの組織再編などの業務に携わることとなる。

(注2)サプライチェーンマネジメント(Supply Chain Management)
主に製造業や流通業において、原材料や部品の調達から製造、流通、販売という、生産から最終需要(消費)にいたる商品供給の流れを「供給の鎖」(サプライチェーン)ととらえ、それに参加する部門・企業の間で情報を相互に共有・管理することで、ビジネスプロセスの全体最適を目指す戦略的な経営手法、もしくはそのための情報システムをいう。(情報マネジメント用語辞典より抜粋)

-企業再生プロジェクトとの“出会い”
2000年に入ると 、「プライベートエクイティ(注3)」という手法を用いた起業再生手法が現れてきた。クライアントの企業の株を買収し、企業価値を上げ、再び株を売却することでキャピタルゲイン(注4)を得るというビジネスモデルだ。野村総研(NRI)は企業に投資をする金融機関と一緒に、再生の戦略構築からその実行支援まで企業再生の実務を担当することになった。これが、皿田氏と企業再生プロジェクトとの“出会い”だった。プロジェクトには財務改革から事業のリストラクチャリング、営業支援など様々な側面が含まれるため、幅広い分野の専門知識が必要とされる。それまで関わってきたものとは一味違うプロジェクトにも、皿田氏は動じなかった。「既に様々なプロジェクトに携わっていたことが、企業再生を考える上での“視点の豊富さ”につながった」と皿田氏。また、学生時代で建築を学んだことも企業再生のコンサルティングに役立ったという。「設計演習に取り組む際、複雑な構造の建物を自分の頭の中で空間的にイメージして組み立てるという作業が必要です。この概念はクライアントの企業を立体的に分析する際に、非常に役立ちました」と皿田氏は言う。人は時として「今、自分が取り組んでいることは本当に将来役に立つのか?」などと不安になることがある。しかし、“今、自分を信じ、全力で取り組んでいることは、将来何らかの形で必ず意味を成してくる”そう実感させてくれる印象的なエピソードだった。

(注3)プライベートエクイティ
株式、転換社債型新株予約権付社債、新株引受権付社債をはじめ、持分権を表象する有価証券を含むエクイティーの発行・取引形態が私募発行で行われたり、取引所及び店頭市場に上場・登録されないもの。プライベート・エクイティーへの投資は、企業の創業段階への投資であるベンチャー・キャピタルと、成熟企業などの事業再編に伴う企業支配権の買収等への投資であるバイアウト投資に大別することが出来る。(野村アセットマネジメント 用語集より抜粋)

(注4)キャピタルゲイン
株式、債券、投資信託、不動産、商品など資産の価格変動に伴う値上がり益。(野村アセットマネジメント 用語集より抜粋)
-高い志を胸に上海へ
上海への赴任が決まる一年前、人材開発及び採用を担当する部署へ異動した皿田氏は、アジア拠点の人材育成を担当することになった。新たな部署で、野村綜研(上海)咨詢有限公司(以下NRI上海)の社員と関わっていく中で、「現地で、NRI上海の発展にもっともっとコミットしていきたい」という思いが強まっていった。そんな折、NRI上海への董事・総経理としての赴任の話が皿田氏のもとに届いた。その話を、二つ返事で引き受けた皿田氏は、08年8月、NRI上海の董事・総経理として正式に赴任した。現在は、人材育成だけでなく、「NRI上海の成長・拡大」というミッション達成のために、収益拡大と人材育成に尽力している。皿田氏は収益拡大と人材育成について“車の両輪”に例えてこう説明する。「収益がなければ、人材育成の機会を社員に与えることができません。逆に、人材が育たなければ、収益だけが勝手に向上するということもあり得ません。両方ともあって、初めて前進することができるのです」。
-中国系企業に対するコンサルティングの難しさ――日中の価値観の差
上海に赴任して1年弱、皿田氏は既に「コンサルティングに対する日中の価値観の差」を実感している。「中国ではより収益に直結する成果が求められ、目に見えないサービスや情報、組織改革などへのニーズは顕在化しにくい」と皿田氏は見る。なぜか?トップダウンで右肩上がりの成長を実現してきた多くの中国企業には、コンサルティングの効果や必要性を実感できないからだ。皿田氏は、コンサルティングファームを「改革」という名の“化学反応”を促進するための“触媒”に例えて、こう説明する。「例えば、上司部下間あるいは部署間での意思疎通が取れておらず、問題がおざなりにされて、改革が思うように進まない。そうした企業に対し、第三者の視点で組織の抱える問題を“見える化”することで、本来エネルギーが内在している企業に“化学反応”を起こす。これが“触媒”としての我々コンサルティングファームの存在意義です」しかし、こうした“化学反応”の効果は「経験」なしには実感できない。

例えば、皿田氏は中国系企業にコンサルティングプロジェクトを提案する際に、「どれだけ収益につながるのか?」と聞かれることがある。その問いは経営者としてある意味正しいが「コンサルティングファームにプロジェクトを任せきりにしては、成果は得られない」と皿田氏は強調する。改革を支援するのがコンサルティングファームであり、実際に改革を“実行”するのは「クライアントとの共同作業」だからだ。コンサルティングに限らず、ビジネスはクライアントとの信頼関係がなければ成り立たない。「まずは実績を上げることで、“目に見える成果や効果”を中国系企業のクライアントに実感していただくことが必要」と皿田氏は強調した。
-「新たな街づくりのヴィジョン」を示す――中国重点都市へのコンサルティング
北京の発展改革委員会より外資顧問機関(4機関)に日本企業として唯一認定されているNRI上海は、民間企業へのコンサルティングに加え、上海や天津をはじめ重慶や蘇州などの重点都市の産業育成計画や都市計画のプランニングも手掛けている。「企業を誘致し、税収を増やし、豊かな街をつくりたい」という地方政府に対し、「新たな街づくりのヴィジョン」を示すのがNRI上海の仕事だ。

例えば、これまでの低賃金の労働力を強みとした労働集約型の企業は、今後競争力を失うと考えられるため、情報通信産業や環境産業などの技術集約型の企業に対する優遇政策を実施し、企業の誘致を図りたい。そうした企業の誘致には技術者の優遇措置や技術者育成のための大学・研究機関の整備も必要となってくる。一方で、経済の中心地である上海の再開発の場合は、技術集約型の企業だけではなく、金融関連企業や弁護士事務所、会計事務所など、経済の中心地にふさわしい企業を誘致する必要がある。皿田氏は「どのようなヴィジョンを示すのかは、都市によって様々で、その都市の特色や立地条件を活かした街づくりをしていく必要がある」と付け加えた。
-「アジアNO1のコンサルティングファーム」へ
「今後、野村総研がアジアNO1のコンサルティングファームを目指し、拡大していく中で、NRI上海はその中核を担っていきたい。そのためにも、まずは“中国にNRI上海あり”と認識されたい」と今後のヴィジョンを語る皿田氏は、現在上海と北京の子会社を合わせて45名いるコンサルタントの規模を、今後拡大していく考えだ。様々な業界の専門知識を持ち合わせたコンサルタントを採用することで、今まで以上に“広い”範囲の問題に対し、“深い”コンサルティングを可能にし、クライアントのニーズにより幅広く対応していく、これがNRI上海の規模拡大の意図だ。

また、皿田氏はNRI上海を「グローバルな人材の供給拠点」にしたいというヴィジョンについても語ってくれた。現在、NRI上海のコンサルタントが扱う言語は、2ヶ国語は当たり前で、英語・日本語・中国語と3ヶ国語を扱うコンサルタントも少なくない。「将来は、彼ら、彼女らを上海で『世界で活躍できるコンサルタント』に鍛え上げ、野村総研が海外展開を図る際に派遣していきたい」と、力強く語る皿田氏は残りの会社人生を賭けて、「NRI上海の成長・拡大」という自らのミッション達成に全力を尽くす考えだ。NRI上海で鍛え上げられたコンサルタントが、世界を股にかけて活躍する日も近い。
-コンサルタントを目指す学生に一言
コンサルタントの仕事の定義は幅が広いですが、「会社を変えていくために、クライアント共に大きな絵を描いていく」ということが私なりの定義です。一見華やかに見えるコンサルタントの仕事の中にも、クライアントの説得などの地道な仕事もあります。しかし、周囲の人を巻き込んで、会社に変革を起こしていくということに楽しみを見出すと、仕事に対して“燃えて”きます。どんな仕事であれ、成功する人は自ら仕事に対して燃えることができる、つまり「自燃」できる人だと思います。“自燃”のための最大の原動力は『好奇心』です。「面白い、知りたい、もっと深く追求したい、もっと良くしたい」そういった気持を大切にしてほしいです。

「このような人材がコンサルタントに向いている」とはっきり言うことはできません。なぜなら、コンサルタントは一定の枠では括ることができないからです。実際、NRI上海にも多種多様な人がコンサルタントとして働いています。しかし、あえて言うなら、「クライアントに価値を提供するということ、そして社会に貢献することに喜びを見いだせる人」がコンサルタントに向いているのではないでしょうか。社会貢献というと綺麗事に聞こえるかもしれませんが、我々のプロジェクトは株主やクライアント、市民など全てのステークホルダーにとって、『幸せ』でなければうまくいくことはありません。自分が良い仕事をすることで、「クライアントの企業が良くなる、そして社会が良くなる」ということに喜びを見いだせることが、コンサルタントの適性なのではないでしょうか。
-ありがとうございました。
野村綜研(上海)咨詢有限公司(略称:NRI上海)
董事・総経理 皿田 尚氏

住所:上海市淮海中路1045号 淮海国際広場9階 200031
TEL: +86(21)5465-9980

インタビュアー:鳥谷拓真
執筆:鳥谷拓真
同行:華迪斐、大江航
校正担当:佐藤ゆり、藤原慎

【編集後記】
今回は「自分がもっとも興味のある業界のひとつであるコンサルティング業界に取材に行きたい!」という思いのもと、日本最大手の野村総研に取材に行ってまいりました。取材では、皿田氏のバックグラウンドから皿田氏が現在NRI上海を率いるようになるまでのひとつの「物語」を聞いているようでした。取材の中で、生き残りの激しいコンサルタント業界で一人前のコンサルタントに成長した皿田氏が、何度も強調したのが「楽しむ姿勢」の大切さです。つまらないことでも「どうすれば楽しくなるか?」という視点を持つことで、つまらないものも面白くすることができる。日常生活の中でついつい忘れがちな「楽しむ」という純粋な心を思い出させてくれる取材でした。(鳥谷拓真)


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「せっかく中国経済の中心地・上海でいるんだから、生の中国ビジネスに触れたい!」そんな思いを胸に、当時、上海財経大学に留学していた小林直樹が立ち上げたサークルです。現在のメンバーは、日本人留学生と中国人大学生で構成されており、上海で活躍する日系企業を取材し、それを「RINKOKUメールマガジン」として発行中です。他にも、留学生向けセミナーや、中国人学生向けの企業見学会を開催しています。全活動の方針を決める定例会議を、毎週土曜日午前10時より、上海財経大学の中山北一路校区で開いています。