
- ―北山:先日、上海・北京からの出張から帰られたそうですね。
再来週にはまた上海・北京に出張との事ですが、仕事では日本と中国どちらが多いのですか? - 斉藤氏:比率は中国と日本、ちょうど半々です。現在、中国では中国人向け販売員研修やサービスマインド研修などを、日本では日本人向けインバウンド研修をメインで行っています。先週と今週は中国、来週と再来週は日本という風に、中国全国・日本全国をコンサートツアーのように回っています。両国で研修経験や滞在経験があることで、それが相乗効果を産み、更によい研修やアドバイスにつながっています。
お陰様で中国に進出してから今年で10年目に突入しました。行った研修やセミナーは1000回を超え、受講者も延べ2万人に達しました。 - ―北山:中国での研修ニーズも増加してきているのでしょうか?
- 斉藤氏:最近は中国での研修が増えてきています。中国は景気が良く経済が成長していますが、同時に競争も激化してきています。その為、“サービス”の重要性が増してきています。現在は研修費用の相場も中国の方が高くなってきているぐらいです。
しかし、当初は日本と中国の文化や習慣の違いに戸惑いました。以前私が中国で中国人向けに研修を行なっていた時のことです。ドアの閉め方について、「丁寧に閉めなさい」と伝えても、研修を受けている人にはどのように閉めたら良いのかが伝わっていませんでした。通訳さんも痺れを切らして「もっと具体的に言って下さい」と言われハッとしました、「音が出ないように閉める」と具体的に伝え、ようやく全員に伝える事ができました。日本は表現が非常に曖昧で、「お客さんの気持ちに立って考えろ」というニュアンスの表現が多いのです。「飲食店らしくコップを置け」ではなく「音を出さないようにコップを置く」と言わなければなりません。 - ―北山:斉藤様はどのような業界の出身なのですか?
- 斉藤氏:私は、「としまえん(豊島園)」の目の前が実家でした。生まれた時からレジャー業界に入る事が決まっていたのかもしれませんね(笑)。東京ディズニーランド(オリエンタルランド)に入社しサービストレーナー、サンリオ・コミュニケーション・ワールドにてサービストレーナーを経て、SHUU研究所に入社しました。事業推進室長に就任し、ホテル、テーマパーク等の 『運営』を計画し、サポートする運営コンサルティングをしました。ウォーターパーク、博覧会、水族館、博物館、美術館、土地再開発計画、 航空会社ラウンジ、自動車ショールーム、コンベンションセンターなどの 計画•教育•運営に携わりました。施設運営を得意としていましたので、インバウンドへの対応もスムーズでした。著書としては「社会人として大切なことはみんなディズニーランドで教わった」を企画監修し、元ディズニーランドのトレーナーが教える“社会人をプロに育てる方法”というDVDを出しました。
- ―北山:レジャー業界一直線なのですね。今年7月1日に富裕層向けビザが解禁されました。中国人旅行客の一人当たりの買い物金額が凄いそうですね。先日、新宿の大手百貨店に行った際に、店内の中国語で“中国の方は中国語の分る係りが買い物に付き添いますので、申し出下さい”というアナウンスが聞こえてきました。中国人買い物客への意識が高まっているようですね。
- 斉藤氏:少しずつ意識も変わってきていますが日本はまだまだインバウンド後進国。訪日外国人に対して効果的アプローチが出来ていません。日本はインバウンド対応に関してもっと中国から勉強すべきです。
- ―北山:中国の観光地に行くと、カタコトの日本語と凄い形相でお土産を売りにくる方達の商魂に圧倒されます。日本ではあのような方々はあまり見た事がありませんね。
- 斉藤氏:日本では、中国人旅行者が沢山お金を落としていく事を知りながら、中国人向けのアピールは少ないのが現状です。諸外国と比べて、圧倒的に語学力が足りません。その分、表示サインなどの工夫が必要になります。だけど、現実には江戸前をEDOMAE 幕の内をMAKUNOUCHIと訳してしまいます。日本ファンの欧米人には受けるかもしれませんが、中国人は意味が更に良くわからなくなってしまいます。また、「どかーん!と安い」なんて書いてあったりしますが、中国人が見ると“安”という漢字しかわかりません。しかもこの1文字は安いという意味ではなく、安心というイメージで伝わってしまいます。「¥↓」のようなマークがあるだけで大分イメージが伝わります。
- ―北山:中国人観光客を惹き付けるにはどうすれば良いでしょうか?
- 斉藤:商品のサンプルをどんどん出して、お試しができるようにしていく事です。日本人と比べて中国人は、商品を購入する前に手に取ったり試着したりして色々試す習慣があります。これを知らずに中国人旅行者に試させる事をしない、あるいは触らせないようにしたり、せっかく購入しようと思っているのに試せないので購入しないということになります。同じ商品でも一つの色を見せるのではなくて、いくつかの色を揃えて「選べるようにする」事も大事ですね。
- ―北山:気がつかないうちに、チャンスを失っている事がありそうですね。
- 斉藤:更に言えば、中国ではカメラ等の高級品は日本とは違って、盗難防止の為、手に取る事ができない場合が多くあります。その為、日本と中国で同じ値段の商品であったとしても、手に取る事ができる日本の売り方、展示方法の方が有利になる事もあります。
この事に気がつかず、カメラを触らせないお店は、「うちの商品は中国人旅行客には売れない」という誤った結論を出してしまいます。しかも現場も経営者も気がつきません。しかし、別の場所でカメラを触らせるお店があれば、そこで購入にいたるでしょう。
そして実際に購入に至らせる最後の駄目押しの一言が言えるかどうかも重要です。たとえば、日本限定、銀座限定、アジア初、最新モデルという言葉には弱いものです。 - ―北山:中国人旅行客にこれを売った方が良いというものはありますか?
- 斉藤氏:いろんな現場を見ていて、鞄をもっと売った方が良いと感じます。中国人は沢山買い物をするので、荷物で両手が一杯になっている人を良く見かけます。そんな姿を見て大きな鞄を売るという発想が大事です。両手の荷物を鞄に入れて、尚余裕があれば更に買い物をする可能性があるからです。
ディズニーランドでは、お客様の両手を塞がないといのも一つのサービスとされています。飲み物や園内パスポートを始め小さなものでもストラップで首からかけさせるという工夫をしています。商品説明をする方の喝舌の良さやお辞儀の角度よりも、お客様に心地よくお金を使って頂く事につながるサービスが本来のサービスです。 - ―北山:日本での今までサービスの研修というと、お辞儀の角度や名刺の渡し方等のマナー教育が中心だったのではないでしょうか。
- 斉藤氏:名刺の渡し方やマナー教育も大事だと思いますが、一番大事なのはその名刺を使って、どうやって商売をするかという事です。日本は商売というものをいつの間にか“マーケティング”というような綺麗な言葉ですり替えてしまいました。頭で考える事が先行しすぎて、最後のクロージングの一手を軽視したり、やらなくなってしまっています。私は、インバウンドを通じて日本人がもともと持っていた、商売の原点に気がつく事が重要だと考えています。
- ―北山:御社の研修サービスの特徴はどんなところにありますか?
- 斉藤氏:私達の研修はテーマパーク施設の運営からスタートしました。テーマパークの良いところは、職種が何十もあるので、多くの仕事を体験できることです。施設を安全に運営しながらどうやってそこから利益を上げるのかという運営教育が原点です。つまり、利益を上げる事を目的としています。従来のサービス系の研修はどちらかというと守りというか、トラブルを起こさないためのマナー研修などが中心ですが、私たちの研修は攻め型の研修と言えるかもしれません。分かりやすく言うと、リゾート施設の飲食店では、“笑顔は勿論、半ライスでも生ビールの小でも良いから売る”というコンセプトを掲げています。
- ―北山:研修はどんなところに気をつけられていますか?
- 斉藤氏:教える内容も勿論大事ですが、教える順番に気をつけています。優秀な方は既に色んな事を学習し体験して吸収されているので、いきなり研修をしても新しい物が入る場所がなくて溢れてしまいます。最初は驚きや気づきを与えて、満タンの容量を減らしてあげることが大事です。つまり、新しいことを学ぶスペースを作るわけです。そこから教育が始まります。研修内容を楽曲に例えると、研修講師はDJのようですね。どのタイミングでどの曲をかけるかによって効果が全く違ってきます。
- ―北山:中国人に対する研修はいかがですか?
- 斉藤氏:中国はとても広く、同じ中国でも地域よって参加者のタイプが違います。例えば、雲南省は鮮やかな民族衣装のせいか、色彩や物の置き方一つにしても非常に敏感です。なのでサービスをする時には地域の特性も考慮に入れる必要があります。北京と上海でも違いますから。
また、多くの企業では、社員が入社すると早く即戦力を育てたい為にアプリケーション(スキル・テクニック)から行なってしまいがちです。しかし、入社後20日以内にOSに匹敵する部分の教育する事が大事です。チームワーク教育などはその典型と言えます。 - ―北山:最近の出没地を教えて頂けますか?
- 斉藤氏:基本的に職業病でオフの日にも色んなところに出没しますよ(笑)。中国だと出没地はどの都市にもある“電脳城”ですね。最新の家電商品が所狭しと売られていて、その地域の習慣が把握しやすいので。日本だと会社の近くで代官山です。東京って、長くいたのでもう充分知っていると思っていたのですが、まだまだ知らない場所が多くあると感じています。
以前は飲み屋とかで、「上海は凄い進んでるよ、東京を追い抜いてるよ」と調子に乗って言ったら、都内に住む人々からは「そう?まだまだでしょ」と言われました。最近、海外を見たからこそ東京の良さや知らない事、あまり行ってない場所に気がつくようになりました。今ではその“まだまだ”の意味が良くわかります。 - レジャーサービス研究所(東京&上海)
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所在地:
〒150-0033 東京都渋谷区猿楽町12-36
ジャパン・アート・プランニング・センター4F
代表者:斉藤茂一
電話番号:050-5539-6362
URL:http://www.lsi-web.net/









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